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But you're so far away
by dec5hiro

彼女の幸せ
高校の友達と再会した。
彼女は昼間は大学病院で言語聴覚士をしながら、夜は大学院で勉強を続けている。
正直言って、彼女はとても努力家で明るく一緒にいて楽しい。
お互い故郷を離れても、何かしらの意思伝達手段を使って
今日まで耐えることなく情報交換してきた。

彼女との出会いは高校2年のとき。
クラスで日本史を選択した数少ない女の子の一人で、
高校でも数少ない演劇部に所属し、生まれつき右耳の聞こえない子だった。

彼女の耳が聞こえない、ということを知ったのはとある日の体育の授業のあとだった。
更衣室から帰る廊下で、私にこう言ったとき。
「あたし右からは聞こえんけん、左歩いてくれる?」
最初はその意味がまったくわからなかったのだ。
たまにいる、「私はこっち側を歩きたい」人間なのかと思った私は
ただただ子供だったのだと今では思うし、
とっさに、それ以外に理由があるかもしれないと
想像力を働かすことができなかった自分が恥ずかしかったのを強く覚えている。

ただ、自分の想像力が及ばないことは世の中に沢山あり、
彼女のはそんなハンデを感じさせないほどに情熱を注いで演劇を楽しんでいたし、
彼女の持つ歌唱力は天性の才能だと思うほど、とても魅力的だったのだ。
決めたことは必ずやり遂げる彼女が、言語聴覚士という当時は聞き慣れない
仕事に就くため、大学ではなく専門学校に進むのだと言った時は
心から彼女を応援しようと、そして自分も彼女のように
心から求めるものを追い続ける情熱があれば、と思った。

彼女は去年、右耳を手術した。
日本では認可の下りていない手術であり、
彼女のように前例が増えることで、今後この手術を受けられる人が増えれば、と思い
手術を受けることを決めたのだと言う。
年末に再会したときはすでに両耳聞こえるようになっており、
嬉々としてその感動を話してくれたときは、私も本当に嬉しかった。

ただ、気にかかるのは彼女が幸せでないと言うこと。
自分以上に彼女には幸せになってもらいたい。
人の幸せを望むのは大なり小なり誰でも持つ思いやりの心である。
彼女のもつ思いやりは、すでに多くの人に希望を与え
多くの人を救い、多くの人の心に宿っているのだから、
彼女が幸せにならずして、どうして平静でいられるだろう。
彼女の未来に幸多かれ。心から願わずにいられない。
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by dec5hiro | 2009-06-01 19:16 | Soliloquy
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